伊発欧州ストリートシーンの開拓者、スラムジャムが説く現在のストリートシーン

1989年にルカ・ベニーニ(Luca Benini)が創業したスラムジャム(SLAM JAM)は、ミラノなどイタリアのファッションシーンの中心地から離れた古都フェラーラを拠点としながらも、ヨーロッパ全体におけるストリートシーンを底上げし導いてきた。日本ではあまりなじみがないかもしれないが、彼らはディストリビューターとしていち早く「ステューシー(STUSSY)」や「カーハート WIP(CARHARTT WIP)」をイタリアで取り扱い、「ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)」や「ビズビム(VISVIM)」といった日本のブランドをヨーロッパに広めた立役者だ。リテーラーとしても実店舗をオープンし、「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」とスポーツメーカー「ナパピリ(NAPAPIJRI)」のコラボライン“ナパビリ マーティン ローズ”を仕掛け、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の“レッドレーベル(RED LABEL)”をディレクションするなど、創業当初から現在に至るまでストリートシーンをけん引する存在として君臨してきた。

創業から30年、スラムジャムがスラムジャムとして常にあり続けられた理由とはーー東京での初のポップアップストアに合わせて来日した主要メンバーのカルロ・ティネッリ(Carlo Tinelli)=マーケティング・ディレクターとルカ・フェラーリ(Luca Ferrari)=セールス・ディレクターの2人に、リテールを始めたきっかけや、熱狂を生んだ「ナイキ(NIKE)」とのコラボスニーカー、「リスペクトする」と話す日本のブランド、そして思い描く青写真まで話を聞いた。

30年前にディストリビューションからビジネスをスタートしましたが、リテーラーとして事業を拡大することになったきっかけは?

いろいろな店舗に卸すディストリビューションでの成功から、自然とリテールを手掛けるようになったんだ。ディストリビューションとリテールは全く違うビジネス形態だから、2つのチームを作って、焦らず失敗しないように慎重に進めた。僕らはクリエイターではなく、DJのようにブランドをセレクトをすることが仕事だったからね。その結果、最初の店舗を2006年にフェラーラにオープンするまで長い時間がかかったんだ。ただこれも実験的な店舗で、ミラノの旗艦店をオープンするまでさらに10年を要した。オリジナルブランドはないけど、ディストリビューションに関しては今もやっているし、実店舗もeコマースもある。ブランドのビジネスパートナーとしてはなんでもそろっている存在になったと思っているよ。

リテーラーとしての店舗展開はフェラーラとミラノだけですが、なぜ?

今は事業としてeコマースに最も力を注ぎたくて、「国外に店舗を開くこと=事業を成長させること」ではないと思っているから、フェラーラとミラノ以外での展開は考えていない。フェラーラはeコマースで扱っている商品を手に取ることができる場所としてオープンしたんだけど、今までの店舗の概念とは全く違う新しいコンセプトにしたくて、本社に隣接させたんだ。訪れた人たちはスラムジャムで扱っている商品と、オフィスで働く社員をガラス越しに見ることができる。商品を売る方法として面白いのはもちろん、スラムジャムが何をしている会社で、どういう人たちが働いているかをクリアにしたくてね。

それでは東京で初となるポップアップストアを決めた理由を教えてください。

ルカ:eコマースに力を入れていると言ったけど、やっぱり実店舗の存在意義というのは大きいんだ。

ルカのいう通り、今の時代はeコマースがあるからこそ、実際に手に取って触って着てもらうことが重要になってきている。スラムジャムの店舗がない都市で暫定的な再現でもいいから、ビジネスとコミュニティーを構築するための方法としてショッピング体験を提供したかった。だからビジネスとコミュニティーの両面のバランスを考えて、ニューヨークとパリ、そして東京での開催を決めたんだ。この3都市はスラムジャムのDNAに沿っているし、特にアメリカと日本をはじめとした東アジアはeコマースで一番大きい市場で、SNSでのファンも多い。認知度を高める上でもポップアップストアはかなり有益だからね。

デザインコンセプトは?

スラムジャムらしい機能的でクリーンなイメージの買い物がしやすい空間さ。

ルカ:ニューヨーク、パリ、東京のそれぞれの都市に合うように、スラムジャムのクリエイティブチームが特別に設計したんだ。

5日間の期間中、「アディダス(ADIDAS)」や「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」「ヴァンズ(VANS)」などさまざまなブランドとのコラボアイテムを日替わりで発売していましたが、この狙いは?

全てを同時に見せてしまうと一つ一つのアイテムが注目されないし、会場を訪れるたびにいろいろな表情を見せられるから。何が発売されるかを楽しみに訪れてくれるだろう?

メガネスーパーのビジョナリーHDが出店攻勢 伊勢丹、阪急などに売り場

メガネスーパーを中核企業とするビジョナリーホールディングスは、子会社であるヴィジョナイズやメガネスーパーなどのグループ企業と連携し、2月20日にオープンする伊勢丹新宿本店本館1階のサングラスコーナーを皮切りに、東京と大阪の主要百貨店5店舗に眼鏡・サングラス売り場を出店する。

昨年8月、「トムフォード アイウエア(TOM FORD EYEWEAR)」や「モンクレール Tシャツ コピー ルネット(MONCLER LUNETTES)」などを手掛けるイタリアの大手眼鏡メーカー、マルコリンの日本総代理店であるヴィジョナイズの全株式を取得して子会社化したことをきっかけに、事業を拡大している。

伊勢丹新宿本店に続きオープンするのは、阪急うめだ本店1階サングラス売場(オープン日は2月27日)、阪急メンズ大阪地下1階(同3月6日)、伊勢丹新宿本店メンズ館1階(ヴィジョナイズの直営店アイスタイルのリニューアルオープン、同3月16日)、三越恵比寿店1階(アイスタイルの新規オープン、同3月27日)。

星﨑尚彦ビジョナリーホールディングス社長は「当グループの従来の強みであるアイケアサービスに加え、ヴィジョナイズが持つファッションに強いブランド力を融合し相乗効果を発揮する。販路を百貨店に拡大できたことは大きい。今後もグループの総力を結集して新規出店や業態開発に取り組みたい」と話した。

中村獅童による新たな「女殺油地獄」 リアルを追求し「夢の世界ではなく現実を見せる」

「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」は、イタリアのファッションブランド「フィオルッチ(FIORUCCI)」とのコラボコレクションを5月10日に発売する。東京・原宿のアディダス オリジナルス フラッグシッフプ ストア トウキョウと「アディダス」公式オンラインストアで取り扱う。

「フィオルッチ」は2017年に復活してからミレニアル世代のファッショニスタやインフルエンサーの間で再び注目を浴びているブランドだ。「アディダス オリジナルス」と「フィオルッチ(FIORUCCI)」は、2019年2月に初めてコラボレーションを実現し反響を呼んだ。第2弾となる今回は「アディダス オリジナルス」のタイムレスで象徴的なシルエットに、「フィオルッチ」のアイコニックで陽気な雰囲気のグラフィックを融合。夏のリゾートウエアから着想を得た同コレクションではサンダル(6490円)やスイムウエア(7690円)など全14アイテムを展開する。

スポーティーなバイザー(3990円)は、レッドとホワイトのコントラストが映えるカラーを採用。「アディダス」で人気のある“ファルコン(FALCON)”シリーズは「フィオルッチ」色に夏らしくアレンジした。全てのアイテムに両ブランドの象徴的なロゴやグラフィックを施している。

発売初日の5月10日には、ローンチパーティー(ナイロン ジャパンがサポート)をアディダス オリジナルス フラッグシッフプ ストア トウキョウで開催する。

群雄割拠の東京ストリートシーンに参戦 喜覚崚介が新ブランド「アダンス」を立ち上げた想いを語る

「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ・アーティスティック・ディレクターにヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が就任し、「シュプリーム(SUPREME)」のアイテムが連日高価格で転売され、メゾンブランドが軒並みスニーカー事業に参入しているように、今世界のファッションシーンは“ストリート”というワード無しに語れない。それは東京も同じで、「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」はもちろん、「ダブレット(DOUBLET)」や「ブラックアイパッチ(BLACKEYEPATCH)」「ヘルレイザー(HELLRAZOR)」といった新世代も台頭している。

この群雄割拠の東京ストリートシーンに名乗りを上げたのが、喜覚崚介(きかくりょうすけ)による「アダンス(ADANS)」だ。「アダンス」は、東京の空気感とトレンドのストリートをうまくミックスしたデザインで、立ち上がり前から一部で話題だった。喜覚ディレクターに、ブランドを立ち上げた狙いからストリートウエアの興隆まで話を聞いた。

自身の会社とブランドを設立した理由を教えてください。

もともと学生時代から社長になるのが目標だったんです。というのも会社に所属していると、ディレクターやデザイナーであっても社員の1人であることに変わらない。結局どんな肩書きでモノを作っても、自分に権利がない限り自分のモノにはならない。だから自分で会社とブランドを立ち上げました。

なぜこのタイミングで?

シンプルに、今自分が得意なジャンルが流行っているからです。このブームはいつ終わるかわからないし、同じようなブランドが出てくる前に立ち上げたのが理由ですね。

それでは、新ブランド名の由来を教えてください。

「アダンス」は“DANCE”が由来で、踊ってるくらいユルい気持ちで、世間やメディアに踊らされている人々を皮肉るという意味を込めています。“DANS”の前の“A”は、単純に自分が一番好きなアルファベットだからつけました。それに今の時代、ウェブでブランド検索をした時に上に来やすいというのもあります。

ブランドコンセプトとファーストシーズンのテーマは?

コンセプトは、“なにかに踊らされず、自ら踊るための服”。踊らされている人々に疑問を投げかけ、面白おかしいものを作っていくイメージです。シーズンテーマは、社会問題やみんながぼんやり気にしていることにしていくつもりで、今回は“Internet Friends”にしました。うわべだけのネットでの馴れ合いだったり、ネットがもはや友達だったり、「“Internet Friends”はすぐに消えていくよ」という風刺を込めています。iPhoneのアプリをモチーフとしたラバーワッペンを胸元にあしらったTシャツや、“Internet Friends”の文字をバックプリントしたフーディー、セットアップのパジャマ、デニム、キャップ、ベルト、サコッシュ、ネックレスまで、型数は小物を含めると約20型です。今着ているTシャツの“ADANS”ロゴのカラーリングは、“NINTENDO64”のアイコンの配色を参考にするなど、遊び心を大事にしています。

Tシャツが7500〜1万円、フーディーが1万8000円、小物が7000〜2万8000円です。実は、「2次流通でどれだけ価格が上がるか」を楽しみにしています。今は価格を高くすればブランドの価値が上がるわけではない時代。ファンがどれくらいの価格で2次流通市場で取り引きしているかでブランドの真の価値がわかります。販売価格より上がっていたら、ブランドの価値も上がっているということなのでうれしいです。

好きだというスニーカーは作らなかった?

ダッドスニーカーやチャンキースニーカーと呼ばれるシルエットがぼってりしたスニーカーが流行っていますが、実際に作るのは難しいので作りませんでした。もし作るなら、ハイテクスニーカーですね。ただ、ラフ・シモンズ(Raf Simons)をはじめとした先駆者たちが作ってきたスニーカーが好きすぎて、作ってもどこか似たようなデザインになってしまう気がして。リスペクトがある分、恐れ多くてその世界に踏み入れられないです。

もしスニーカーを作るならどのブランドと組みたい?

「ナイキ(NIKE)」です。“エア マックス 95(AIR MAX 95)”が好きな、“95 LOVER”なので。

メーンターゲットは?

具体的な年齢や性別は設定していませんが、あえて言うならメンズの全世代です。着飾ったファッションからは卒業したいけど、普通の格好はしたくない人たちに向けていて、色のトーンもグラフィックの入れ方も抑え、街になじみながらも違和感がある感じです。ただ女性も着やすいように、ピンクカラーのアイテムなども用意しています。

初年度の売り上げ目標は?

売り上げについては特に考えていません。死ぬ気でやるのも大事だと思いますが、ストレスなく、楽しくできるかどうかは服に表れると思っているので。売り場は、まずはオンラインストアを開いて、その後セレクトショップに卸していきたいです。「シュプリーム」のように、全国的に卸はしていないけど、本当にかっこいい店にはプロモーションの意味で卸している、あのイメージですね。いつかは旗艦店もオープンしたいです。ブランドは世界観がとても大切だと思っていて、「アダンス」もそこで勝負したいーー。だからこそ世界観が伝えられる旗艦店はブランドにとって必要なんです。

先ほど自分の得意分野が流行っているという話がありましたが、ストリートウエアが盛り上がっていることについてはどう思いますか?

世界的にはヴァージルの活躍があり、音楽もヒップホップが中心になっている中、日本はまだまだ。デザイナーにしても、ラッパーにしても、スタイルアイコンにしても、スターがいない。だからこそ、盛り上がる余地があるんじゃないかなと思っています。

ヴァージルのようにブランド以上にデザイナーが注目されることについては?

本当にいい傾向だと思っています。今までは組織が力を持っていたので、デザイナーの力でブランドが有名になれば、そのデザイナーがブランドを去っても変わっても売れ続ける時代でした。でも今はデザイナー個人にファンがつく時代だから、デザイナーが移った先にファンが付いていくのが普通になってきている。作り手が使い捨てされず、個人にファンがつく時代になったと思います。

コラボがブランドを拡大する上で重要になっていますが?

ブランドの価値は上がり、認知も広がるので重要だと思います。ヴァージルは「ナイキ」のようなプロダクト重視のインターナショナルなブランドから、ボーイズ・ノイズ(Boys Noize)みたいなインディペンデントなアーティストまでコラボしてるじゃないですか。あの“好きだからコラボする”姿勢は憧れますね。

ブランドとしての5年後、10年後の目標は?

小学生の頃からアメリカの音楽を聴いて育って、エンターテインメントに憧れがあるので、ニューヨークコレクションに出たいですね。ただ、ファッションショーというよりもエンターテインメントショーをやりたいです。ライブのようにみんなの心が動くようなショーをやりたいですね。